休復職② 休職中

休職中の社員にどう対応すべきか|連絡頻度・休職期間の目安・復職準備を産業医が解説

メンタル不調で休職に入った社員に対し、会社・人事はどう関わればよいのか。休職中の回復プロセス、適切な休職期間の目安、連絡の取り方、復職準備の進め方について、産業医の実務経験から解説します。

この記事の要点

  • 休職制度は法律上の義務ではなく、性質としては 「解雇の猶予(解雇猶予措置)」 と理解するのが実務的
  • 休職中は 「①休む → ②日常生活を取り戻す → ③復職準備」 の3フェーズで捉えると整理しやすい
  • 連絡はフェーズに応じて段階的に。①の時期は月1回程度の報告で十分、移行期からは面談で復職準備を確認
  • 復職可否の 最終判断主体は会社。判断軸は「勤怠の安定」と「業務遂行能力」(事例性)

本記事は休復職対応シリーズの ②休職中 です。前回の①休職時の続きとなります。

  1. 休職時
  2. 休職中(本記事)
  3. 復職時
  4. 復職後フォロー

休職制度の位置づけ ―「解雇の猶予」という考え方

多くの企業で休職制度が設けられており、過去の判例を見ても、一定以上の規模の企業では休職制度の存在が当然視される傾向にあります。ただし、法的には、会社が休職制度を設ける義務はありません。

法的側面から端的に言えば、休職制度は 「解雇の猶予」 と認識して差し支えなく、見方によっては会社側の温情ともとれるものです。

なお、休職期間の長さについて法律上の下限が定められているわけではありません。ただ、解雇予告期間が30日と定められていること(労働基準法第20条)を踏まえると、「解雇の猶予」という性質上、30日未満の休職可能期間は実質的に意味をなしにくい、と考えることもできます(採用後の経過期間等に応じて休職制度の適用対象者を限定すること自体は問題ありません)。


休職中の3つのフェーズ

休職が必要ということは、理由はともかく 仕事が継続できない状態にあるということです。メンタル不調者の多くは、睡眠障害・気分の変動・意欲の低下などにより、日常生活もままならない状態で休職に入ります。

休職中は、以下の3フェーズに分けて理解すると整理しやすくなります。

① とにかく休む期間

体を休めることが最重要です。1日16〜20時間ほど眠るケースも珍しくなく、産業医としても 「それでいい」 とお伝えしています。この時期は、とにかく睡眠をとることが第一です。

② 日常生活を取り戻す期間

長時間の睡眠が不要となり、徐々に家事や買い物などの日常生活を送ることが苦ではなくなってきます。人と連絡を取ること・会うことが億劫でなくなり、外に出て活動するなど、少しずつ日常生活に戻っていきます。

ただし、まだ①のフェーズにあるにもかかわらず、金銭面の不安・世間体・義務感から焦って②へ進もうとする方も少なくありません。気持ちは理解できますが、焦りは基本的にデメリットこそあれ、メリットは非常に薄いものです。

③ 復職に向けた準備をする期間

仕事への復帰を想定した準備を進めるフェーズです。具体的には、以下が推奨されます。

  • 生活リズムの安定(出社していた頃のリズムに合わせる)
  • 外出機会を通じた体力の向上
  • 集中力・判断力・思考力など業務遂行能力の回復(読書、PCでの資料作成、資格勉強など)

教科書的には「図書館に通う」ことが推奨されるケースが多くあります。生活リズムを整えながら、集中力や持続力を確認できるためです。

また、リワークプログラムを活用するケースもあります。生活リズムの安定や再発防止に向けた知識獲得など多くのメリットがあり、コストはかかるものの、休復職を繰り返すケースや復帰後の業務遂行に懸念があるケースでは特に有用です。

復職の大きな目的は 「体調面が安定し、中長期的に安定して仕事ができる状態を維持すること」 にあります。復職準備は、復職という大きな環境変化に備え、ギャップを少しでも埋めるために重要なプロセスです。


休職可能期間はどのくらいが適切か

法的な最低ラインに明確な定めはありませんが、前述の考え方を踏まえると おおむね1か月(30日) が下限の目安となります。実際に1か月のみ認めている企業も存在し、ルール上は問題ありません。

ただし、前述の①〜③のフェーズを考慮すると、1か月で戻るには各フェーズを1週間〜10日でこなさなければならない計算になります。これは、ほとんどのケースで現実的ではありません。

産業医の立場からは、療養に十分な期間を設定することを推奨しています。目安としては6か月〜1年程度を確保できると望ましいでしょう。理由は次のとおりです。

  • 休職期間が短いと、不調が十分に改善していない状態での復職になりやすい
  • 本人の復職意志があり、かつ主治医から復職可の診断書が出ている場合、産業医の立場としては復職を認める以外の選択肢はほぼありません(特に休職期間満了が迫っている場合)
  • その結果、頻回の欠勤や低いパフォーマンスにつながると、最終的に困るのは直属の上長や周囲のメンバーです

復職は従業員の権利や福利厚生ではなく、会社側の配慮であり、安全確保措置と解釈できるものです。休職期間が長いことで会社が直接受けるデメリットは社会保険料の負担程度であり、職場内の混乱が発生するよりはずっと軽いものではないでしょうか。


休職中の会社との連絡はどうするか

「会社からの連絡で調子が悪くなる。必要があれば従業員側から連絡する」という要望があったがどうすればよいか——複数の人事担当者から、こうした相談を受けたことがあります。

ここで前提となるのが、休職制度は有給休暇のような「自由に取得できる権利」ではないという点です。「解雇の猶予」である以上、従業員から会社へ定期的に状況報告をする義務はあると考えて差し支えありません。

また、安否確認を含む安全配慮義務が会社側に課されている以上、連絡が取れない状態は問題視すべきです。ただし、特に①のフェーズでは不必要な負荷をかけないほうがよいことも事実です。

フェーズに応じた連絡体制(段階設定)

そこで、フェーズに応じて連絡体制を段階的に設定することを推奨しています。

  • ①とにかく休む期間 → 従業員からの月1回程度のメール報告(「引き続き療養が必要」等)だけでも可
  • ②〜③の移行期(休職可能期間の半分が経過した時点など) → 対面またはWeb面談ツールを活用し、復職準備の状況を確認。連絡頻度も増やし、会社側の受け入れ準備も並行して進める

「復職可能の診断書が出たから急いで面談をしてほしい」という要望も何度も頂きますが、復帰準備を急ぐのは管理部門・部署(上長)双方に負担がかかります。そうならないためにも、定期的な状況確認が重要です。

復職可否の最終判断は「会社」が行う

復職可否の最終判断主体は、あくまで 会社です。主治医・産業医の意見は尊重すべきであり、否定するのは難しいものの、それに従う法的義務があるわけではありません(ただし、判例を見る限り、概ね従わざるを得ないとは言えます)。

会社が判断する際の軸は、「勤怠が安定しているか」「一定程度の業務遂行が可能か」 に置くこと。これを 事例性 と呼びます。復職判断の指標は、あくまで業務遂行能力であるべきです。

ただし、会社の判断は無制限の裁量というわけではありません。職種を限定せずに雇用している社員については、片山組事件(最高裁 平成10年4月9日判決・労判736号15頁)の判断枠組みに注意が必要です。この判例は、職種や業務内容を特定せずに労働契約を締結した場合、現に命じられた特定の業務を十分に遂行できなくても、能力・経験・企業規模・配置の実情などに照らして 「配置される現実的可能性がある他の業務」 について労務を提供でき、かつその申し出があれば、債務の本旨に従った労務提供があると判断したものです。

つまり、職種限定のない契約では、「元の業務が完全にできないから即復職不可・退職」とするのではなく、配置可能な他業務での復帰を検討する余地を会社側に求める枠組みになっています。特に一定規模以上の企業では、この点を踏まえた対応が実務上重要です。


補足:「100%でないなら復職不可」という考え方について

「元の仕事が100%できる状態でなければ復職を認めない」と主張する企業に出会うこともあります。意図も意味も理解できますし、原則論としては妥当とも考えられます。

ただ、それはほぼ実現不可能です。復職直後からフルパフォーマンスを発揮できる人がどれくらいいるかと問われれば、**ほぼ0%**と答えざるを得ません。特にメンタル不調からの復職直後はある程度の業務負荷軽減が必要であり、本調子に戻るには時間がかかります。

「復職直後からフルパフォーマンス」が叶わない以上、現実的な選択肢は2つです。

  1. 復職後の数か月間は配慮・調整をしながら徐々に通常業務に戻し、安定後に中長期的に活躍してもらう
  2. 復職直後から負荷をかけ、結果として不安定な状態が続く、好不調の波を繰り返す、あるいは再休職に至る

不安定な状態が発生・持続して一番困るのは、直属の上司や同じチームのメンバーです。人員不足を補うための採用コスト、教育研修にかかる時間、教育者側の負担など、影響は大きくなります。

従業員の立場、会社側の立場、産業保健職・医療者の立場のいずれにおいても、前者(1)のほうが好ましいことに、ほぼ議論の余地はないと思われます。前述の片山組事件の考え方からも、「元の業務を100%遂行できること」だけを唯一の復職基準とするのは、法的にも現実的にも適切とは言えません。この点については、次回の ③復職時 でも取り上げます。


まとめ

  • 休職制度は法的義務ではなく、性質は「解雇の猶予」。だからこそ従業員側にも定期報告の義務があると考えられる
  • 休職中は「①休む → ②日常生活 → ③復職準備」の3フェーズ。①での焦りは禁物
  • 休職可能期間は、フェーズを踏まえると6か月〜1年程度の確保が望ましい
  • 連絡はフェーズに応じて段階的に。①は月1回程度の報告、移行期からは面談で復職準備を確認
  • 復職可否の最終判断は会社が行い、軸は「勤怠の安定」と「業務遂行能力」

次回は ③復職時 の対応について解説します。

休職中の社員対応や復職準備の進め方(連絡体制の設計、面談の運用、就業規則への反映など)でお困りの際は、お気軽にご相談ください。


よくある質問(FAQ)

Q. 休職期間はどのくらい設定すればよいですか? A. 法律上の明確な下限はありませんが、回復のフェーズを踏まえると、6か月〜1年程度を確保できると望ましいと考えます。期間が短すぎると、不調が十分に改善しないまま復職となり、再休職や周囲の負担につながりやすくなります。

Q. 休職中、会社から社員へ連絡してもよいのでしょうか? A. 連絡が取れない状態は安全配慮義務の観点から望ましくありません。一方で、療養初期は負荷をかけないほうがよいため、初期は月1回程度の報告、回復が進んだ移行期からは面談で復職準備を確認する、という段階的な連絡体制を推奨します。

Q. 主治医から「復職可」の診断書が出たら、必ず復職させなければなりませんか? A. 復職可否の最終判断は会社が行います。主治医・産業医の意見は尊重すべきですが、それに従う法的義務があるわけではありません(ただし判例上は概ね尊重せざるを得ません)。判断軸は、勤怠の安定と業務遂行能力(事例性)に置くことを推奨します。

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