用語集
人事・労務のご担当者様向けに、労働衛生・産業保健で頻出する用語をカテゴリ別にまとめました。〈 〉内は関連する法令等の根拠です。
本ページは概要把握を目的とした要約です。個別の運用にあたっては、最新の条文・通達・ガイドライン原文をご確認ください。
1. 法令・体制
労働安全衛生法(安衛法)
労働者の安全と健康の確保および快適な職場環境の形成を目的とする法律(1972年制定)。労働基準法から分離独立した労災防止の基本法で、事業者の講ずべき措置・健康診断・面接指導等を広く規定。
安全配慮義務 〈労働契約法第5条〉
使用者が、労働者の生命・身体等の安全を確保しつつ労働できるよう必要な配慮をすべき義務。明文化される前から判例で確立しており、違反は損害賠償責任(民事)につながる。
▶ 関連コラム:安全配慮義務という重要かつ難解な課題について
労働災害 〈安衛法第2条第1号〉
労働者が業務に起因して負傷・疾病・障害・死亡すること、および建設物・設備・原材料・作業行動等に起因するもの。通勤災害は労災保険法上の概念として別途整理。
産業医 〈安衛法第13条、安衛則第13条〉
事業場で労働者の健康管理等を専門的立場から行う医師。常時50人以上の事業場で選任義務があり、事由発生から14日以内に選任。常時1,000人以上(一定の有害業務は500人以上)の事業場では専属が必要。
衛生管理者 〈安衛法第12条、安衛則第7条〉
常時50人以上の事業場で選任が必要な、衛生に係る技術的事項を管理する者。事業場規模に応じて選任人数が増え、業種によっては第一種衛生管理者免許等が要件。
総括安全衛生管理者 〈安衛法第10条〉
一定の業種・規模(建設業・林業等100人以上、製造業等300人以上、その他1,000人以上)の事業場で安全衛生業務を統括管理する者。通常は工場長など事業の実施を統括する者が就任。
(安全)衛生委員会 〈衛生委員会=安衛法第18条、安全委員会=第17条、安全衛生委員会=第19条、開催頻度=安衛則第23条〉
常時50人以上の事業場で毎月1回以上開催する、労働者の健康障害防止対策等を労使で調査審議する場。委員の半数は労働組合等の推薦に基づき指名し、議事概要は労働者へ周知・記録を3年間保存。
産業保健総合支援センター(さんぽセンター)
独立行政法人労働者健康安全機構が各都道府県に設置・運営する、産業医・衛生管理者・人事労務担当者等への研修や相談支援を行う機関。小規模事業場向けには地域窓口(地域産業保健センター)も整備。
職場巡視 〈産業医=安衛則第15条、衛生管理者=安衛則第11条〉
作業環境・作業方法・設備等を実地に確認し、健康障害の防止につなげる活動。産業医は原則毎月1回(一定要件を満たし事業者の同意があれば2か月に1回)、衛生管理者は週1回。
2. 健康診断
定期健康診断 〈安衛法第66条第1項、安衛則第44条〉
常時使用する労働者に1年以内ごとに1回実施する一般健康診断。既往歴・業務歴の調査、身長・体重・腹囲・視力・聴力、血圧、血中脂質、血糖、肝機能、尿、心電図、胸部X線等が法定項目(一定要件で医師判断による省略可)。
特定業務従事者の健康診断 〈安衛則第45条(対象業務は安衛則第13条第1項第3号)〉
深夜業を含む業務、高熱・寒冷物体を扱う業務、著しい騒音・粉じん・異常気圧下の業務等の特定業務に従事する労働者を対象とし、配置替えの際および6か月以内ごとに1回実施する一般健康診断。深夜業の従事者が典型例で、定期健診(年1回)とは別建ての頻度。ただし胸部X線・喀痰検査は1年以内ごとに1回でよい。
雇入時健康診断 〈安衛則第43条〉
常時使用する労働者を雇い入れる際に実施する健康診断。項目は定期健診とほぼ同じだが省略不可で、入社前3か月以内に受けた健診結果の証明書提出があれば当該項目を省略可。
特殊健康診断 〈有機則第29条、特化則第39条、鉛則第53条、高圧則第38条、電離則第56条、石綿則第40条 等〉
有機溶剤・特定化学物質・鉛・高気圧作業・電離放射線・石綿等の有害業務従事者に義務付けられる健康診断。原則として雇入れ・配置替えの際および6か月以内ごとに1回実施。なおじん肺健診はじん肺法に基づき別建てで、じん肺管理区分に応じ1~3年ごと。
就業区分(就業判定) 〈安衛法第66条の4、安衛則第51条の2〉
健診結果に異常所見がある労働者について、医師等の意見を聴取し「通常勤務/就業制限/要休業」に区分すること。就業制限では労働時間の短縮、作業転換、深夜業の回数減少等を具体的に判断。
事後措置 〈安衛法第66条の5〉
健診結果と医師等の意見を踏まえ、就業場所の変更・作業転換・労働時間短縮・深夜業回数の減少等の必要な措置を講じる事業者の義務。健診の実施自体ではなく「実施後の措置」が法の眼目。
健康診断個人票 〈安衛則第51条〉
健診結果を労働者ごとに記録する法定書類。一般健診は原則5年間保存。特殊健診は種類により保存年数が異なり、じん肺7年、特別管理物質・電離放射線30年、石綿40年など長期保存が必要。
3. メンタルヘルス
ストレスチェック制度 〈安衛法第66条の10、安衛則第52条の9~〉
常時50人以上の事業場で1年以内ごとに1回実施義務がある、心理的な負担の程度を把握する検査(50人未満は当分の間努力義務)。結果は実施者から本人へ直接通知し、事業者は本人同意なく結果を取得できない。
高ストレス者 〈ストレスチェック指針〉
ストレスチェックで一定基準に該当した者。本人の申出により医師による面接指導の対象となり、事業者は申出を理由とした不利益取扱いが禁止される。
4つのケア 〈労働者の心の健康の保持増進のための指針(メンタルヘルス指針)〉
メンタルヘルスケアの基本的枠組み。①セルフケア、②ラインによるケア、③事業場内産業保健スタッフ等によるケア、④事業場外資源によるケアの4つを継続的・計画的に推進。
ラインケア
管理監督者が行う、職場環境等の把握・改善と、部下からの相談対応・「いつもと違う」変化への気づきと対応。日常的に部下と接する立場としての一次的な役割。
リワーク
精神疾患により休職した労働者を対象に、復職に向けて生活リズムの回復や集団でのプログラム参加等を通じ、職場復帰と再休職予防を図るリハビリテーション。医療機関・地域障害者職業センター等が実施。
試し出勤(リハビリ出勤)
正式な復職決定の前に、職場への試験的な出勤や軽作業を段階的に行う取組み。法令上の制度ではなく、賃金・労災の取扱い等を就業規則等で事前に定めておくことが望ましい。
復職判定(職場復帰可否の判断) 〈心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き〉
休職者が業務に復帰可能かを、主治医の診断書、産業医の医学的評価、業務遂行能力、職場環境等を総合して判断するプロセス。主治医の「復職可」と職場で求められる業務遂行能力が必ずしも一致しない点に留意。
4. 過重労働
長時間労働者の面接指導 〈安衛法第66条の8、安衛則第52条の2〉
時間外・休日労働が月80時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者が申し出た場合に、医師が行う面接指導。研究開発業務は月100時間超で申出不要(第66条の8の2)、高度プロフェッショナル制度対象者は別途(第66条の8の4)。
36協定(サブロク協定) 〈労働基準法第36条〉
法定労働時間を超える時間外労働・休日労働をさせる際に必要な労使協定。根拠は安衛法ではなく労基法で、所轄労働基準監督署への届出が要件。働き方改革により上限規制が罰則付きで導入。
過労死等 〈過労死等防止対策推進法第2条〉
業務における過重な負荷による脳血管疾患・心臓疾患、または業務による強い心理的負荷による精神障害を原因とする死亡・これらの疾患・これらに起因する自殺。労災認定基準(脳・心臓疾患、精神障害)と密接に関連。
5. テレワーク
テレワーク
ICTを活用した、場所や時間にとらわれない柔軟な働き方の総称。働く場所により在宅勤務・サテライトオフィス勤務・モバイル勤務に大別。労働時間管理や健康確保が課題となりやすい。
テレワークガイドライン 〈テレワークの適切な導入及び実施の推進のためのガイドライン(厚労省)〉
テレワーク導入・実施時の労務管理上の留意点を整理した指針。労働時間の把握、長時間労働対策、作業環境の整備、メンタルヘルス、労災の取扱い等を包括的に解説。
作業環境整備(テレワーク) 〈情報機器作業ガイドライン等を参照〉
自宅等の執務環境について、照明・室温・換気、椅子と机の高さ、ディスプレイの位置等を適切に整えること。事業場と異なり事業者の直接管理が及びにくいため、チェックリスト等による自己点検や周知が現実的な対応。
事業場外みなし労働時間制 〈労働基準法第38条の2〉
労働時間の算定が困難な事業場外労働について、所定労働時間等を働いたものとみなす制度。テレワークでは「随時の業務指示に即応する義務がない」等の要件を満たす場合に限り適用可能で、安易な適用は不可。
中抜け時間
テレワーク中に私用等で一時的に業務から離れる時間。休憩時間としての扱いや時間単位の年次有給休暇の活用など、取扱いを就業規則等であらかじめ明確化しておくことが望ましい。
つながらない権利
勤務時間外や休日に、業務上の連絡・対応をしなくてよいとする考え方。日本では法制化されていないが、テレワーク普及に伴う長時間労働・オンオフの曖昧化への対応として議論が進む。
6. 両立支援
治療と仕事の両立支援 〈事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン(厚労省)〉
がん・脳卒中・心疾患・糖尿病・肝疾患・難病など、継続的な治療が必要な労働者が、治療を受けながら就労を継続できるよう事業者が行う支援。私傷病が主たる対象で、安全と健康の確保を前提に就業上の配慮を検討。
両立支援ガイドライン 〈厚労省〉
治療と仕事の両立支援の進め方を示した指針。本人の申出を起点とすること、主治医・産業医・会社の情報連携、両立支援プラン/職場復帰支援プランの作成等の手順と、疾患別の留意事項を整理。
勤務情報提供書・主治医意見書
両立支援における情報連携の様式。会社が業務内容等を主治医へ伝える「勤務情報提供書」と、主治医が就業継続の可否や望ましい配慮を会社へ示す「意見書」が一対で、本人同意を前提に運用。
両立支援コーディネーター
労働者本人・主治医・会社(人事・産業保健スタッフ)の三者の間に立ち、情報を整理・連携させて両立支援を円滑に進める役割。労働者健康安全機構が養成研修を実施。
仕事と育児・介護の両立 〈育児・介護休業法〉
育児休業・介護休業、所定労働時間の短縮、所定外労働・時間外労働・深夜業の制限など、家庭責任を負う労働者の就業継続を支える制度群。「両立支援」を広く捉える際に含まれる領域。
7. 健康経営
健康経営
従業員等の健康保持・増進を経営的な視点で捉え、戦略的に実践する経営手法。経済産業省が推進。健康を「コスト」ではなく将来の収益性を高める「投資」と位置づける考え方で、NPO法人健康経営研究会の登録商標。
健康経営優良法人認定制度 〈経済産業省が設計、日本健康会議が認定/2016年度開始〉
優良な健康経営を実践する法人を「見える化」し、社会的に評価される環境を整備する顕彰制度。大規模法人部門(上位500法人に「ホワイト500」)と中小規模法人部門(上位500に「ブライト500」、501~1500位に「ネクストブライト1000」)の2部門。運営事務局は日本経済新聞社。
健康経営銘柄 〈経済産業省・東京証券取引所が共同選定/2014年度開始〉
健康経営に優れた上場企業を選定し、長期的視点での企業価値向上を重視する投資家に紹介する制度。原則1業種1社程度を選定し、株式市場での評価につなげる狙い。
健康経営度調査 〈経済産業省〉
健康経営の取組状況を把握するため経産省が毎年実施する調査。優良法人認定・銘柄選定の基礎データとなり、回答企業にはフィードバックシートが提供され自社の立ち位置の把握に活用。
コラボヘルス
健康保険組合等の保険者と事業者が積極的に連携し、明確な役割分担と良好な職場環境のもとで、加入者(従業員)の予防・健康づくりを効果的・効率的に進める取組み。健診・レセプトデータの共有が基盤。
データヘルス計画
健保組合等の保険者が、レセプト・健診データの分析に基づきPDCAサイクルで保健事業を実施する事業計画。コラボヘルスや健康経営と一体的に運用されることが多い。
プレゼンティーイズム
出勤はしているものの、心身の不調により本来の生産性を発揮できていない状態。健康経営の効果測定で重視される指標で、医療費等よりも企業の損失額が大きいとされる。
アブセンティーイズム
健康問題による欠勤・遅刻・病気休業など、業務そのものに就けていない状態。プレゼンティーイズムと並ぶ健康経営の効果測定指標。
8. 作業環境等
労働衛生の3管理
労働衛生対策の基本的枠組みで、①作業環境管理(環境中の有害要因の除去・低減)、②作業管理(作業方法・姿勢・保護具等の適正化)、③健康管理(健診等による健康状態の把握・保持増進)の総称。法令上の用語ではなく概念整理。
作業環境測定 〈安衛法第65条、作業環境測定法〉
有害物質を扱う等の指定作業場について、空気中の有害物濃度等を測定し評価すること。一定の作業場では作業環境測定士による測定が必要で、結果は管理区分により評価。
管理区分 〈作業環境評価基準〉
作業環境測定の評価結果の区分。第1管理区分(適切で良好)、第2(なお改善の余地あり)、第3(直ちに改善措置が必要)に分かれ、第2・第3では原因究明と改善措置が義務付け。
局所排気装置 〈有機則・特化則・粉じん則 等〉
有害物質の発生源近くで気流により捕捉・排出する換気設備。性能要件(制御風速・抑制濃度)や定期自主検査(1年以内ごと)が各規則で規定。
リスクアセスメント 〈化学物質=安衛法第57条の3(義務)、その他=第28条の2(努力義務)〉
危険性・有害性を特定し、リスクを見積もったうえで低減措置を検討・実施する一連の手法。一定の危険有害な化学物質(リスクアセスメント対象物)については実施が義務。
SDS(安全データシート) 〈安衛法第57条の2〉
化学物質の名称・成分・危険有害性・取扱い上の注意・応急措置等を記載した文書。対象物質の譲渡・提供時に交付が義務付けられ、ラベル表示(第57条)と併せて化学物質管理の基礎。
化学物質管理者 〈安衛則第12条の5〉
リスクアセスメント対象物を製造・取扱う事業場で選任が必要な管理者(2024年4月施行)。ラベル・SDS確認、リスクアセスメント実施の管理、労働者教育等を統括。
情報機器作業(旧VDT作業) 〈情報機器作業における労働衛生管理のためのガイドライン〉
パソコン・タブレット等のディスプレイを用いた作業。作業時間・休止、照明、機器の調整、健康診断(眼・筋骨格系)等につき、法令ではなくガイドラインで管理の考え方を提示。
WBGT(暑さ指数)/職場の熱中症対策 〈安衛則第612条の2(2025年6月1日施行)〉
気温・湿度・輻射熱・気流を総合した暑熱環境の指標(湿球黒球温度)。改正により、WBGT28℃以上または気温31℃以上で連続1時間超もしくは1日合計4時間超の作業について、早期発見の報告体制整備・重篤化防止の手順作成・関係者への周知が事業者に義務付け(罰則あり)。
