日中の眠気と血糖値

「昼食後に眠くなる」は血糖値のせいか ― 日中の眠気と職場の対応

はじめに

「昼食後に眠くなるのは血糖値スパイクが原因」という説明を目にする機会が増えました。

先に結論を申し上げると、この説明は、食後の眠気を説明する複数の仮説のなかで最も根拠が乏しい部類に入ります。そしてこの記事の本題は、それ自体よりも、その先にあります。職場で問題になる眠気には対応可能な原因が背景に隠れていることがあり、それを「食事の問題」として処理してしまうと、拾えるはずのものを拾い損ねる、という話です。

前半で医学的な検証を、後半で人事・労務担当者としての対応を整理します。

この記事の構成
前半(医学的な検証)は読み飛ばしていただいても差し支えありません。

・・検証の結論だけをご覧になる場合 → 整理すると
・職場での対応をご覧になる場合 → 職場で問題になる眠気とは

第1部:食後の眠気は何によって起こるのか

血糖の変動が大きい人ほど眠いわけではない

私は過去、糖尿病や生活習慣病を専門として臨床に携わっていました。その立場から見て、血糖説には最初につまずく点があります。

健常な方でも、血糖値は一日を通して絶えず変動しています。食事だけでなく、血糖値を上げるホルモンと下げるホルモンのバランスによって精緻に制御されており、これは病的な現象ではなく、生理機能が正常に働いている姿そのものです。

食事に伴う血糖の上昇が過度である場合は「食後高血糖」と呼ばれ、程度によっては境界型(耐糖能異常、いわゆる「糖尿病予備群」)や糖尿病と判断されます。動脈硬化リスクや糖尿病への進行リスクの観点から、無視してよい概念ではありません。ただし、それが眠気と直結するかどうかは、まったく別の話です。

もし血糖の変動が眠気を引き起こすのであれば、変動の大きい方ほど強い眠気を訴えるはずです。糖尿病診療で日常的に目にする血糖の変動幅は、健常な方の食後の上昇とは比較にならない大きさになります。

しかし実際には、血糖変動そのものを理由とした日中の眠気が主訴として挙がってくることは、ほとんどありません。また、もともと日中の眠気を訴えていた方が、血糖コントロールの改善によって眠気を消失させたという報告も乏しいものです。仮説が正しければ観察されるはずのことが、観察されていません。

「食後の低血糖で眠くなる」は成り立つか

低血糖を原因とする説明もあります。「食後に上がりすぎた反動で下がり、それが眠気になる」という筋道自体は、機序として存在しないわけではありません。実際、糖尿病と診断されない肥満の方などで、インスリンの初期分泌が低下・遅延し、その後に遷延して過剰分泌されることにより低血糖をきたす「反応性低血糖」と呼ばれる病態があります。

ただし、症状の出方が合いません。低血糖は、栄養として糖をほぼ唯一の基質とする脳にとって危機的な状況です。そのため血糖値を即時に引き上げる代償機構が働き、その過程で動悸・冷や汗・手の震えといった交感神経症状が先に現れます。眠気や集中力低下といった中枢神経症状は、より低い血糖値でなければ通常は出現しません(閾値には個人差があり、慢性的な高血糖や低血糖の反復によって偏位します)。

つまり、警告症状をいっさい伴わず眠気だけが単独で出現するという経過は、機序から考えにくいものです。加えて、「反応性低血糖」として語られる訴えは、症状の出現と実測血糖値の一致が乏しい例が多いことも知られています。

血糖・インスリン説を検証した実験

食後の眠気そのものは、もちろん実在します。ただし、それを説明する仮説は複数あり、どれも決定的とは言えません。まず、血糖説について実験的に何が分かっているかを整理します。

血糖の上昇が覚醒を維持する神経(オレキシンニューロン)の働きを抑えるという仮説は存在します。ただし、これは動物や細胞を用いた基礎研究の段階にあり(Burdakov 2006)、ヒトでの検証がありません。

さらに、同じ研究グループの後続研究では、生理的な濃度のアミノ酸混合物がこのオレキシンニューロンを興奮させることが示されています(Karnani 2011)。タンパク質を含む通常の食事では、糖による抑制が相殺される可能性を示唆する結果であり、この経路をもって「食事で眠くなる」と説明することは、動物実験の水準でも単純ではありません。

ヒトを対象とした実験では、噛み合わない結果が報告されています。 血糖の上昇が眠気を生むのであれば、インスリンが高く出た側で眠気が強くなるはずです。しかし健常者18名(男女各9名)に高脂肪低炭水化物食と低脂肪高炭水化物食を与えた研究では、インスリン濃度が有意に高かったのは低脂肪高炭水化物食の後でしたが、疲労感が有意に強かったのは高脂肪低炭水化物食の3時間後であり、眠気も同じ方向の傾向を示しました(Wells 1997)。眠気と対応していたのはインスリンではなく、消化管から分泌されるコレシストキニン(CCK)というホルモンの濃度でした。ただしこの研究は朝食を用いたもので、高脂肪食は脂質が総エネルギーの7割以上という、通常の食事とかけ離れた組成である点に留意が必要です。

「何を食べたか」の影響も、客観指標では検出されていません。 睡眠潜時をポリソムノグラフィで測定した研究では、固形食は同量の水(対照)と比べて睡眠潜時を有意に短縮させた一方、高脂肪食・高炭水化物食・混合食のあいだには有意差が認められませんでした(Orr 1997、各10名)。食事をとること自体は客観的な眠気として表れるが、糖質量を含めた栄養素の構成は影響していない、という結果です。なお検査食の投与は17時で、昼食後を直接検証したものではありません。

派生形としてのトリプトファン・セロトニン説

「糖質を摂ると眠くなる」という説明には、血糖そのものではなく、脳内のセロトニンを介するという版もあります。

炭水化物を摂取するとインスリンが分泌され、分岐鎖アミノ酸が筋肉に取り込まれます。その結果、血中でトリプトファンが相対的に優位となり、脳への取り込みが増えて、セロトニンおよびメラトニンの合成が増える、という機序です(Fernstrom 1972)。機序としては血糖説より筋が通っており、実際にこちらを根拠として挙げる情報もあります。

ただし、この経路が成立するには、炭水化物がほぼ単独で摂取される必要があります。タンパク質を含む通常の食事では、食事由来のアミノ酸そのものが増えるため、トリプトファンの相対的優位は生じにくくなります。前述のアミノ酸によるオレキシンニューロンの興奮も、同じ方向を示唆します。純粋な糖質のみを摂取する場面は日常の食事では稀であり、実際の食後の眠気をこの経路だけで説明することは困難です。

「血液が胃腸に集まって脳が酸欠になる」説

血糖説と並んでよく見かける説明ですが、これは根拠に乏しいものです。脳血流には自動調節機構があり、全身の血流配分が変化しても、脳への灌流は一定の範囲で維持されます。食後に消化管への血流が増えることは事実ですが、それによって脳が機能低下をきたす水準まで血流が減るわけではありません。

消化管からの信号

一方で、消化管由来の信号が眠気に関与するという説明には、一定の裏づけがあります。

Wells 1997 で眠気と対応していたのはCCKでした。またOrr 1997 で、同じ熱量でも固形食では睡眠潜時が短縮し、液状食では同様の効果が見られなかったことは、栄養素そのものではなく胃の拡張と、それに伴う迷走神経を介した副交感神経優位への傾きが関与する可能性を示唆します。

ただし、これらはいずれも「食事をすると眠くなる」ことの説明であって、「何を食べたか」の説明ではありません。食事内容を変えることで眠気を制御できるという主張とは、方向が異なります。

概日リズム

この中で比較的しっかりした根拠を持つのが概日リズム説です。

午後の早い時間帯に眠気の谷が来ることは「ポストランチ・ディップ」と呼ばれます。昼食を毎時の液体栄養剤に置き換えた標準化条件下でも、この谷を示す群(5名)と示さない群(7名)に分かれ、示す群では直腸温リズムの12時間成分の振幅が高く、かつピーク位相が遅いために、10時から15時にかけて体温が上昇せず平坦になっていました(Monk 1996)。レビューでも、昼食を摂っても摂らなくても、また時刻を知らされていなくても、同じ時間帯に眠気が起こると総括されています(Monk 2005)。

つまり、そもそも昼食を食べなくても、この時間帯には眠くなります。 ただし対象は十数名規模であり、個人差が大きいことも同時に報告されています。

睡眠負債と食事の量

前夜の睡眠を5時間に制限した若年男性12名に、305kcalと922kcalの昼食を二重盲検で与え、2時間の単調な運転課題を課した研究では、重い昼食後に車線逸脱が有意に多く、食後90〜120分で最多となりました(Reyner 2012)。

注意すべきは、この研究が睡眠制限を前提に設計されている点です。著者らは、昼食後の落ち込みは昼食とはおおむね無関係な概日現象であり、前夜の睡眠が乱れることで悪化すると位置づけています。食事量の影響は、睡眠不足という条件が重なったときに顕在化する可能性がある、という程度の理解が妥当かと思われます。

言い換えれば、ここでの主役は食事量ではなく睡眠不足です。

職場の物理環境

医学研究の枠からはやや外れますが、実務上見落とされやすい要因として、執務環境があります。

換気が不十分な会議室では二酸化炭素濃度が上昇し、眠気や集中力低下の要因となります。室温、照明の照度、作業の単調さも同様です。事務所衛生基準規則第3条では、空気調和設備等を設けている場合について、室内の二酸化炭素濃度を1,000ppm以下、室温を18度以上28度以下に保つよう努めることとされています。

これは、会社側が実際に介入できる数少ない要因でもあります。特定の従業員ではなく特定の会議室や時間帯で眠気が生じているのであれば、個人の食事や体調ではなく環境側を確認する価値があります。

整理すると

「食べると眠くなる」は事実です。ただしその原因については、確からしさに序列があります。

説明 根拠の状況
概日リズム 標準化条件下の実験があり、レビューの評価も一貫。昼食を摂らなくても同時間帯に眠気が生じる。ただし規模は小さく個人差が大きい
睡眠不足 単独でも日中の眠気の主要因。食事量の影響も、睡眠制限下でのみ顕在化している
消化管からの信号(胃の拡張・CCK) 固形食と液状食の比較、ホルモン測定による裏づけあり。ただし「食べたこと」の説明であって「何を食べたか」の説明ではない
職場の物理環境 医学研究の枠外だが、介入可能で見落とされやすい
食事の量 睡眠不足という条件が重なった場合に限り、運転課題で差が検出された
トリプトファン・セロトニン 機序は存在するが、タンパク質を含む通常の食事では成立しにくい
血糖・インスリン ヒトでの直接の検証がなく、関連実験ではインスリンが高い側でむしろ眠気が弱いという結果。栄養素構成による差も検出されていない
消化管への血流集中 脳血流の自動調節により成立しない

血糖値スパイクを原因とする説明は、この中で最も根拠が薄い部類のものを、最も断定的に語っている、ということになります。

ここまでで確認しておきたいこと

ここで注目していただきたいのは、個々の結論よりも、その手前にある事実です。

眠気という、誰もが日常的に経験するありふれた現象について、実験室で食事内容を統制し、睡眠時間を管理し、脳波で客観的に測定してもなお、原因は特定されていません。専門家が条件を揃えて検証してもこの状態です。

にもかかわらず、最も断定的で、最も分かりやすく、そして最も対処法まで示してくれる説明が、最も根拠の乏しい血糖説でした。この非対称は偶然ではありません。原因が特定されていない領域ほど、断定的で行動に移しやすい説明が流通しやすくなります。

このことは、後半の話に直接つながります。


第2部:職場での対応

職場で問題になる眠気とは

昼食後に少し眠くなるのは、誰にでも起こる生理的な現象です。問題になるのは、それが毎日続いている場合、あるいは会議中や作業中に明らかに集中を欠く程度に強い場合です。

このとき、原因を食事に求めて生活習慣の助言で終わらせてしまうと、拾えるはずのものを拾い損ねます。持続する強い眠気の背景には、対応可能な原因が隠れていることがあるためです。

産業医が背景として考えること

日中の強い眠気が続いている場合、産業医は主に次のような可能性を念頭に置きます。

睡眠不足(睡眠不足症候群) — 最も多い原因です。単純に睡眠時間が足りていない状態で、長時間労働や生活リズムの乱れが背景にあることが少なくありません。疾患として分類されてはいますが、実態は労働時間管理と直結する領域です。

交代勤務・夜勤の影響 — 該当する職場では最頻の原因になり得ます。概日リズムと勤務時間帯の不一致によるもので、個人の生活習慣の問題ではありません。

薬剤の影響 — 眠気を生じる薬は多岐にわたります。抗ヒスタミン薬、抗うつ薬、抗不安薬、睡眠薬などのほか、**神経障害性疼痛治療薬(プレガバリン、ミロガバリン)や筋弛緩薬(エペリゾン、チザニジン)**は腰痛・頸部痛で処方されることが多く、本人が「痛み止め」と認識していて眠気と結びつけていない場合が少なくありません。花粉症の市販薬を服用しているだけというケースも珍しくありません。ただし薬剤と症状の関係は個別性が高く、判断は主治医や薬剤師に委ねるべき事柄です。

睡眠時無呼吸症候群(SAS) — 夜間に呼吸が止まることで睡眠が分断され、本人は十分寝ているつもりでも日中に強い眠気が出ます。肥満との関連が指摘されますが、日本人では顎顔面の形態的要因により、肥満がなくても発症することがあります。いびきや夜間頻尿を伴うことが多く、治療によって明確に改善する疾患です。

就寝前の飲酒 — 入眠を促す一方で睡眠を分断します。本人が「よく眠れている」と認識していることが多い点が厄介です。

甲状腺機能の低下 — 進行が緩やかで自覚しにくく、労働安全衛生規則第44条に定める定期健康診断の項目に甲状腺の検査は含まれていないため、見逃されやすい代表格です。

うつ病などの精神疾患 — 過眠を主症状とするタイプもあり、「疲れているだけ」と本人も周囲も認識していることがあります。

このほか、睡眠相後退、むずむず脚症候群、鉄欠乏なども鑑別に挙がります。

なお、糖尿病治療中の方が眠気を訴えることは珍しくありませんが、血糖変動そのものよりも、睡眠時無呼吸症候群の合併や夜間頻尿による睡眠分断といった別の経路によることが多く見られます。

疾病性の判断が会社側にとって難しい理由

前節をご覧いただくと分かる通り、「眠そうにしている」というひとつの現象の背景には、労働時間管理の問題から、治療で明確に改善する疾患、生活習慣、精神疾患まで、性質のまったく異なる可能性が並びます。これらを区別するには、睡眠の状況、服薬歴、体重の推移、いびきの有無、業務量と勤務時間、精神症状の有無といった情報を、相互に関連づけて評価する必要があります。

そして重要なのは、世間で広く流布している血糖の話が、この中に入ってこないということです。

ここに構造的な問題があります。会社側が善意で原因を推測しようとすると、手元にある最も分かりやすい説明に引き寄せられます。それは多くの場合、生活習慣や食事の話です。結果として「昼食を軽くしてはどうか」「間食を控えては」といった助言に落ち着き、睡眠不足や睡眠時無呼吸といった本命が素通りされます。

つまり、疾病性の判断は、会社側にとって単に難しいだけでなく、誤った方向に向かいやすいという性質を持っています。そして誤った方向に向かった場合、失われるのは時間だけではありません。治療可能な疾患が放置されるあいだ、本人は「意欲の問題」として評価され続けることになります。

職場で生じる実害

三つの主体に分けて整理します。

一、本人への不利益。 眠気による集中力・判断力の低下は、本人にも周囲にも「能力の問題」「意欲の問題」として認識されやすく、評価に反映されてしまうことがあります。背景に治療可能な疾患があった場合、これは本人にとって不当な扱いになり得ます。

二、企業への不利益(プレゼンティーイズム)。 上記の集中力・判断力の低下が積み重なった結果として、出勤していながら本来の生産性が発揮できていない状態が生じます。欠勤として可視化されないため対策の対象になりにくい一方、企業全体で見た損失は小さくないという指摘があります。

三、安全上のリスク。 営業車の使用、社用車あるいはタイムシェアでの車両移動、出張時のレンタカー運転などがある場合は、別途の考慮が必要です。運転中の眠気は事故に直結し得るため、労働契約法第5条に定める安全配慮義務の観点からも、切り分けて検討する必要があります。

人事担当者に求められる対応

三点で整理します。

一点目、疾病を推測しない。 産業保健では「疾病性」と「事例性」という二つの軸が用いられます。疾病性、すなわち病名や治療内容は、産業医や主治医が扱う領域です。会社側の判断は「事例性」、すなわち業務や勤怠にどのような支障が現れているかを軸に置くべきです。前節で述べた通り、診断名を推測しようとすることは、善意によるものであっても誤った方向に向かいやすく、多くの場合は不適切です。

二点目、健康状態を直接聞き出そうとしない。 健康情報は機微な個人情報であり、人事が本人から直接聴取することには慎重であるべきです。本人が話したがらないのはむしろ自然なことで、そこを強く押すと信頼関係を損ないます。

前提として、面談で話した内容が誰にどこまで共有されるのかを、あらかじめ明確にしておくことが重要です。これは望ましい運用というだけでなく、「労働者の心身の状態に関する情報の適正な取扱いのために事業者が講ずべき措置に関する指針」(平成30年9月7日)において、事業者に取扱規程の策定が求められている事項でもあります。

産業医の立場から申し上げると、会社から「産業医と話してほしい」「体調の確認のため」としか説明がない場合、「面談で話した内容によって自分が不利益を被るのではないか」と考える従業員はかなり多い印象です。こちらが否定しても、面談の終盤まで不信感が拭えないケースが少なくありません。

三点目、産業医面談に繋ぐ。 長時間労働者への面接指導は労働安全衛生法第66条の8、ストレスチェックの高ストレス者への面接指導は同第66条の10に定めがありますが、それ以外にも、同法第13条の3により、事業者は労働者が産業医等に健康相談を行える体制の整備に努めることとされています。本人の申し出や事業者からの依頼による面談は、随時実施が可能です。

従業員への伝え方は、あくまで事例性の観点から行います。例えば「ここ2週間ほどで遅刻や当日欠勤が増えている」「何か事情があるのか、会社にできることがないか話を聞かせてほしい」「体調が良くないなら、一度専門家の話を聞いてはどうか」という枠組みのほうが受け入れられやすいでしょう。会社側が何を問題・解決すべき課題としているのか、その対応の中でなぜ産業医面談という枠組みを提案しているのかを説明することも重要です。

面談を有効にするために

産業医面談を実施する際には、会社側の考えや立場、困りごとをあらかじめ共有しておくほうが、意義のある面談になる可能性が高まります。「最近様子が気になる」という情報だけで面談に臨むのと、業務上どのような支障が出ていて会社として何を検討したいのかが共有されているのとでは、産業医が判断できる範囲や、本人の話を聞く際の焦点が大きく変わり、会社側へのフィードバック内容にも影響します。

なお、事前情報としてお聞きした内容は、本人に既に伝えられている場合を除き、面談中に本人へ話すことはありません。従業員側から見て、自分の知らないところで会社と産業医のあいだに情報連携がなされていると受け取られると、その後の情報が得られなくなるためです。

産業医面談は診療の場ではないため治療はできませんが、就業上の配慮が必要かどうかを判断し、必要に応じて医療機関への受診勧奨を行います。

まとめ

日中の眠気を血糖の問題として説明する情報が広く流布していますが、血糖変動の大きい方でその訴えが目立つわけではなく、実験的にも栄養素構成の影響は検出されていません。この説明には無理があります。

より重要なのは、眠気という単純な現象ひとつをとっても、背景の判別には専門的な評価が必要であり、そこに踏み込もうとするほど、分かりやすい通説に引き寄せられるという構造です。

人事担当者の役割は、原因を突き止めることでも、健康について助言することでもありません。事例性の観点から専門的な判断が必要な状態を見分け、産業医に繋ぐことです。その一段階を挟むだけで、本人にとっても企業にとっても結果は大きく変わります。


※本記事は一般的な情報提供を目的としたものであり、個別の症状については主治医にご相談ください。


参考文献

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